中国には長い歴史から生まれた健康に対する知恵がたくさんあります。これらの考え方や知恵を日本の皆さんも日々の健康に役立ててください。
中国で身近な刮サ療法
中国の刮サという療法は、中医学の経絡理論に基づくもので、鍼灸や推拿、点穴、 吸い玉などとともに、中医学の非薬物治療で、健康維持と治療に有効な自然療法の一 種です。
この刮サ療法は、簡単で安全でありながら効果も高く、中国では昔から一般的に知 られている療法です。このことは、町の薬局に刮サ用の板やオイルが売られていることからもわかります。
刮サ療法ってどのような療法?
東京中医学研究所でも推拿療法の補助治療として刮サ療法を取り入れています。用 いるものは水牛の角で作られたへらのような板と紅花などのオイルです。
まず、背中、首、胸腹、ひじなど、症状に合わせたツボや傷めた筋肉のあたりを植 物の油や酒類や水などを塗って皮膚をこすり、黒紫色の斑点を浮き上がらせて内部の 炎症を取り除きます。
だいたい三~六日に一度、三回~五回を一療程として行います。治療後は、一杯の 白湯を飲んで十五~二十分休むようにします。
この黒紫色の斑点は二、三日で自然に消えます。
ドロドロの血をサラサラに
刮サ療法のおもな効能は、以下のようなものです。
①筋肉の収縮と緊張を調節することで、軟部組織の周囲の血液循環を促進することが できる。
②疼痛と筋肉の緊張や痙攣を取り除くことができる。
③血管を拡張し、血流やリンパ液を活性化して体内の老廃物や毒素を排出するので、 全身の抵抗力を高める。
④体の陰陽の平衡を調整する作用があるので、内臓機能の改善と調整をすることがで き、内臓の陰陽を平衡にすることができる。たとえば、腸の蠕動が亢進している患者 に、腹部と背部を刮サ治療すると、腸の蠕動は抑制を受けて正常に回復し、反対に腸 の蠕動が減退している患者に用いると、蠕動は促進され正常に回復する。
昨年の夏、ひどい暑さのために夏バテで食欲がなく、めまいも起こしていた三十六 歳の女性にこの刮サ療法を施したところ、背部一帯に黒紫色の斑点が出ました。それ でも痛みはなく、その後三日ほどで黒紫色は完全に消え、体調も戻ったそうです。
梅雨は、湿度と気温が高く、持病が表面に出てきたり、体の微妙なバランスがくず れがちです。そのような体調不良を改善するには刮サ療法と推拿療法をあわせて行う のがおすすめです。
※刮サの「サ」はやまいだれに沙
『きょうから使える中国伝統療法 刮痧』
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